現場から上がってくる「あの手順書、また一から作るんですか」の声
展示会や催事の設営を請け負う仕事をしていると、案件ごとに「施工手順書」を作る場面が必ず出てくる。搬入経路、設営順序、使用資材、撤去時の注意点――現場のスタッフに渡すスライド式の手順書だ。
これが地味に重い。案件は毎回レイアウトも会場も違うので、テンプレートをコピーして中身を書き換えるだけでも1件あたり数十分〜1時間はかかる。担当者が忙しい時期に限って案件が重なり、「手順書ができていないから現場に聞くしかない」という本末転倒な状況が起きる。
私たちオージャストは、このオウンドメディア「AI代行堂」を運営しながら、実際に展示会設営などの現場業務も抱えている会社だ。だからこの手順書問題は他人事ではなく、自分たちの業務そのものだった。そこで「案件情報を入力すると、スライド式の施工手順書PDFが数分で出来上がる仕組み」を自分たちでAIを使って内製した。この記事はその実体験の記録であり、同じような「定型ドキュメントに時間を溶かしている」経営者・担当者への応用の話でもある。
何を作ったか:入力は案件情報だけ、出力はスライドPDF
仕組み自体はシンプルだ。
- 案件名、会場、搬入日時、ブース図面の情報、使用資材リストなどをフォームやシートに入力する
- その情報を元に、AIが「設営手順」「撤去手順」をスライド構成で組み立てる
- スライドはそのままPDFとして書き出され、現場に配布できる形になる
ポイントは、ゼロから文章を考えさせているわけではないということだ。過去の手順書のパターン(搬入→什器組み立て→装飾→最終チェック、といった型)をあらかじめAIに理解させた上で、案件ごとの固有情報(サイズが違う、資材が違う、会場の制約が違う)を当てはめさせている。つまりAIに「作文」をさせるのではなく、「型に情報を流し込ませる」使い方をしているのが実務上の勘所だと感じている。
つまずいた点:生成に時間がかかりすぎる問題
作り始めてすぐにぶつかったのが、スライド1枚1枚を順番に生成させると、案件によっては数十枚になるスライド全体の生成に予想以上の時間がかかるという壁だった。担当者が「入力してコーヒーを一杯淹れてくる間に終わる」くらいのスピード感を目指していたのに、待たされるようでは結局「自分で作った方が早い」となりかねない。
ここで効いたのが、処理を細かく並列化するという発想だ。スライドを最初から最後まで1本の流れで生成させるのではなく、「搬入パート」「設営パート」「装飾パート」「撤去パート」のように処理を分割し、それぞれを同時に走らせて、最後に結合する形に組み替えた。これによって体感の待ち時間はかなり短縮され、「案件情報を入れて数分でPDFが出来る」という実用レベルに落ち着いた。
AIで何かを自動化しようとするとき、多くの人が「賢い指示文(プロンプト)を書けば速くなる」と考えがちだが、実際にボトルネックになるのは処理の設計そのものであることが多い。一括で全部やらせるのではなく、分解して並列で走らせる。これは施工手順書に限らず、AIで業務を自動化する際にほぼ共通して効いてくる考え方だと思う。
この考え方はどこまで応用できるか
施工手順書はかなり特殊な業務に見えるかもしれないが、構造だけ抜き出すと次のようになる。
- 毎回似たパターンで作る定型ドキュメントがある
- 案件・現場ごとに変わる部分は情報として整理できる
- 変わらない部分(型)と変わる部分(固有情報)を分けて考えられる
この3条件が揃う業務であれば、同じ考え方はほぼそのまま使える。実際に応用が利きそうな例を挙げると、
- 製造・建設業の作業手順書、安全マニュアル
- 店舗・フランチャイズの新人向けオペレーションマニュアル
- 営業日報や定例の報告書(フォーマットは同じで数字と所感だけ変わるもの)
- 点検記録、検査報告書のようなチェック項目ベースの書類
といったあたりは、型がはっきりしている分、むしろ施工手順書より着手しやすいケースも多い。逆に「毎回内容も構成もバラバラで、型と呼べるものがない」書類は、今の段階ではAIに任せるより人が書いた方が早いことが多い。ここの見極めを誤ると、「AIで自動化したのに逆に手間が増えた」ということになりがちなので注意したい。
内製してみて分かった、地味だけど大事なこと
実際に運用してみて感じたのは、AIに書かせること自体より、「入力する案件情報をどう整理するか」の設計の方が重要だということだ。入力フォームが雑だと、出てくる手順書も雑になる。逆に、現場で本当に必要な情報(搬入車両のサイズ、エレベーターの有無、会場の閉場時間など)を最初にきちんと洗い出しておくと、AIが組み立てる手順書の精度は目に見えて上がる。
つまりAI導入の成否は、AIそのものの性能よりも「自社の業務のどこが型で、どこが変数か」を整理できるかどうかにかかっている。この整理作業自体は、実は経営者や現場責任者が一番よく分かっている部分でもある。
まとめ:定型ドキュメントは「型」を見つけた者勝ち
施工手順書の自動生成は、私たちにとって「AIを実際の業務にどう組み込むか」を学ぶ良い実験になった。処理を分割して並列化するという、地味だが効果の大きい工夫があったことも含めて、これは記事やセミナーで聞くだけでは分からない、自分たちで手を動かしたからこそ得られた実感だ。
もし御社にも「毎回同じような構成で作っている書類なのに、なぜか毎回時間がかかる」というドキュメントがあれば、それはAIで型化できる可能性が高い。ただ、こうした仕組みづくりは「型の設計」と「AIの使い方」の両方が絡むため、忙しい本業の合間に手探りで進めるのは意外と骨が折れる。そうした作業は、AI代行堂にLINEで相談してもらえれば、スタッフが状況に合わせてAIを使い分けながら仕組みづくりごと代行することもできる。料金は月額5万円(税抜)とAIクレジットの実費のみで、初回は1点無料で試せるので、まずは今抱えている「毎回作るのが面倒な書類」を一つ思い浮かべて相談してみてほしい。
